1 緊張型頭痛
[概念・原因]
緊張性頭痛は一種の自覚症状であり、持続性の長い身体的ストレや精神的ストレスにより誘発される。この緊張型頭痛は頭痛全体のだいぶぶんを占める。主に頸部から肩・背部にかけて持続的な緊張により、けつえきの循環が悪くなり、乳酸、ヒスタミンなどの代謝部質の蓄積によって、受容器が刺激される痛みを引き起すと考えられる。一旦頭痛が誘発されると、悪循環に陥る可能性がある。
[症状]
緊張型頭痛の痛みの頻度は、毎日~数日に1回であり、その痛みは30分~1週間持続する。痛みは両側性、頭部全体、後頭部に、圧迫感、頭重感、締めつけられるような感じがあり、中高年に多く見られる。時にはめまい、眼精疲労、肩こり、全身倦怠感などの随伴症状を伴うこともあるが、日常的な動作では悪化しない。このような緊張型頭痛はTENS療法を用いると比較的良好な結果が得られる事が報告されている。
[期待される効果]
頭痛、肩背部における抹消血液循環の改善や筋緊張緩和による頭痛の軽減
[治療例・電極配置]
両側の増帽筋(内増に頭板状筋、小菱形筋、後頭直筋、肩甲挙筋)上にあるトリガーポイントや圧痛点の中から数カ所を選択して刺激を行う。実際のTENS治療の電極配置の一例を図に示す。
[刺激周波数・強度]
① 2~5Hz(パルス幅 0.2msec)・チクチク感よりやや強めで行う。疼痛部位の近位での筋収縮を起こす強い刺激では、二次的に頭痛を誘発する場合があるので、注意する。
② 80~120Hz(パルス幅0.9~0.12msec)チクチク感が得られる強さで行う。
刺激時間 約10~30分(患者の体質により加減する)、週5回で行い、10回を1クールとして各クール間で休みをとる。

※ 電極配置の見方としては、同じ番号の黒丸(⚫️)と白丸(◯)同士を1対として刺激する( )内は、刺激する領域の神経支配を示す。
❶ ❷ | 左右乳様突起と項窩間中央の増帽筋・頭板状筋上(脊髄神経後枝、頸神経後ろ枝) |
① ② | 第7頸椎・第1胸椎棘特記間両側各々約6cmの増帽筋・肩甲挙筋上(肩甲背神経、副神経、頸神経叢筋枝 、頸神経後枝、胸神経後枝) |
❸ ❹ | 左右肩峰ー第7頸椎棘突起間の増帽筋上(副神経、頸神経叢筋枝、鎖骨状神経) |
③ ④ | 第2・3胸椎棘突起両側各々約4cm増帽筋・菱形筋上(肩甲背神経、副神経、頸神経叢筋枝、胸神経後枝)各1対 |
[コメント]
脳腫瘍による頭痛でも、上述した治療法により症状が一時的に軽減されるため、緊張形頭痛、群発性頭痛や偏頭痛などと間違って治療を続けると、手術の適応期に遅れることになりかねないので、頭蓋内疾患や頭蓋骨の腫瘤の疑いがあれば精密検査を勧める。また、精神的、身体的ストレスを解消するため、運動やレジャーなどを積極的に行うことや、長時間にわたる同一姿勢や眼疲労などの要因の除去も必要と思われる。