[概念・原因]

ベル麻痺とは、原因が特定できない顔面神経麻痺で、突発性片側性抹消顔面神経麻痺と定義された、寒冷刺激、ストレス疲労などで、免疫機能が低下し、ウィルスに感染されやすくなり発生する。臨床上、1型単純性ヘルペスウィルスの感染により、顔面神経管内の顔面神経が腫張、周囲の血管の痙攣により、顔面神経が圧迫されることや損傷することにより神経の信号練達が阻害され、表情筋への支配ができなくなり、ベル麻痺(Bells palsy)となる。この病気は成人に多く、特に春や秋に多く見れる。

[症状]

顔面神経は笑い、まばたき、眉ひそめなど、表情を表す筋郡の動きや、唾液の分泌、涙液の分泌、アブミ骨筋、舌前3分の2の味覚の伝達などの生理機能を支配している。ベル麻痺が起こると、障害された側の顔面神経が機能不全になり、顔面筋が麻痺するため、前額部の皺は消失し、眼裂は増大、鼻唇溝hあ浅くなり、口角は下垂し健側に引っ張られる。患者は皺寄せ、口笛、閉眼、歯の露出、頬を膨らませるなどの動作ができなくなる。患側で流涙、流廷、味覚減退や聴覚過敏も見られる。軽症なら2~3週間、一般的には完全に回復するするのに1~2ヶ月を要する。しかし、神経が完全に変性した場合には回復まで6ヶ月間が必要である

[期待される効果]

局所血流の改善、神経や筋の運動機能の正常化、筋萎縮の予防

ベル麻痺の治療にTENSを用いると有効的である。しかし、これらの報告は長期(3ヶ月)にわたる感覚閾値以下での漸増(徐々に量を増やす)刺激法は主である。

[治療例・電極配置]

両側の増帽筋(内層に菱型筋、肩甲挙筋)、第1背側骨間筋、患者の外側翼突筋、咬筋、口輪筋、眼輪筋、上唇挙筋、顎二腹筋などのトリガーポイントや圧痛点のなから数カ所を選択して通電する。ベル麻痺における実際のTENS治療の電極配置の1例を図に示す。耳垂の後方、咬筋、頬骨弓下縁に陰極を、その他には陽極を配置する。

[刺激周波数・強度]

①2~5Hz ②2Hzと5Hzの交互刺激、目の周囲のおける電気刺激は感覚閾値で行い、その他の部位は運動域値上の許容範囲内の強さで刺激を行う。暖めると良いので、サーモ導子を用いる。

刺激時間

10分~30分(患者の体質により加減する)、治療は隔日1回、10回を1クールとし、各クールの間に適当な休みをとる。

※ 電極配置の見方としては、同じ番号の黒丸(⚫️)と白丸(◯)同士を1対として刺激する( )内は、刺激する領域の神経支配を示す

患者頬骨弓中央下縁の咬筋上(下顎神経)
下顎角と耳垂下縁中央の咬筋上(下顎神経、大耳介神経)
外眼角の直下で、頬骨の下縁の陥凹部の大頬骨筋上(顔面神経、上顎神経)
口角外惻約1cmの口輪筋上(顔面神経、上顎神経、下顎神経)
乳様突起と項窩間中央の頭板状筋上(脊髄神経後枝、頸神経後枝)
耳垂後方の陥凹部の顎二腹筋後腹上(顔面神経、大耳介神経)

コメント

末梢性、中区性の鑑別が大切である、発症初期の治療では多くの箇所に強刺激を加えない事が肝要である。また顔面部への冷たい風は禁物で、マスクで保護し、眼瞼閉合のできない場合では目薬を使用し、目の乾燥や感染を防ぐ、治療効果を高めるために発症してから10日以内での治療の開始が望ましい。