[概念・原因および症状]
肩痛とは、石灰沈着性腱炎、肩関節包および肩関節周囲軟骨部組織の退行性、炎症性疾患などによる非特異的な肩の痛みである。肩痛が6ヶ月以上経過すると慢性肩痛と言われる。関節リュウマチや骨粗鬆症性肩痛は誘因が異なるため、除外される。本症状は肩部の痛みやだるさ、また肩関節動作が制限され、強直などの症状が見られる。原因は不明であるが、加齢による上腕二頭筋長頭腱、腱板の退行性変化、または短頭の筋や腱の炎症、滑液包炎、靭帯炎など、多くの軟部組織炎症が起こることで、運動制限と疼痛が発生すると考えられている。病歴は数ヶ月から1~2年に及ぶこともある。本病の発症は緩慢であり、通常腫れを伴わない肩の痛みを発生するが、その疼痛は頸部や上腕部に向かって放散する。夜間になると症状が重くなり、肩関節の活動も明らかに制限され、特に外転位の時に最もひどくなる。肩関節位癒着が生じると結滞、結髪動作などに障害が起こる。上腕二頭筋筋腱部、肩峰下縁、肩部後面の小円筋などに圧痛が見られる。外傷性によるものは肩関節外転機能の回復が遅く、その周囲の痛みも長期化持続する。本症状の重いものは上腕部筋に萎縮がみられ、強い痛みが発生する。外転や内施などの動作は高度に制限されることになる。
[TENS療法の実際]
腱の炎症、滑液包炎、靭帯炎などによる非特異的な肩の痛みの治療にTENSを用いると効果的です。
[期待される効果]
抹消循環の改善、筋緊張の緩和、鎮痛効果、筋萎縮の予防
[電極配置]
患部周囲、三角筋やその付近、大円筋、増帽筋、棘上筋などにあるトリガーポイントの中から数カ所を選択して通電する。


※ 電極配置の見方としては、同じ番号の黒丸(⚫️)と白丸(◯)同士を1対として刺激する( )内は、刺激する領域の神経支配を示す。
❶ | 肩峰外端の後下際縁の三角筋上(腋窩神経、鎖骨上神経) |
① | 腋窩横紋の後端上縁の大・小円筋の上(腋窩神経、肩甲下神経、上外側上腕皮神経) |
❷ | 肩甲棘中央の増帽筋・棘上筋上(肩甲上神経、福神経、頸神経叢筋枝、胸神経後枝) |
② | 棘下窩中央の棘下筋上(肩甲上神経、胸神経後枝、助間神経外惻皮枝) |
❸ | 肩峰と上腕骨頭間の三角筋上(腋窩神経、鎖骨上神経) |
③ | 上腕の三角筋前縁(腋窩神経、筋皮神経、外側上腕皮神経) |
[刺激周波数と強度]
①5Hz以下、刺激強度は運動閾値よりやや強めで行う。
②干渉波(80Hz~120Hz 可変)刺激強度は痛覚閾下で行う
[刺激時間]
①10~30分(体調により加減する)
隔日1回・10回をを1クールとして休み期間をとる。
コメント
TENS療法と運動療法を同時に行うとよりよい治療効果が得られるので、無理のない負荷をかけ、持続的に運動することが肝要である。また、治療期間中は十分な休憩をとり、患部を冷やさないように注意する。