概念・原因
ギックリ腰は、筋膜性腰痛の一種や椎間板ヘルニアの初期症状とみなされている。この疾患は肉体労働者やスポーツ選手によく見られ、つまり不適切な姿勢や力の入れ方によって、腰部の筋、筋膜、腱などの軟部組織が損傷され生じるものである。例えば重すぎる物を持ち上たり、激しい運動、くしゃみ、体を伸ばす時になどにも引き起こされる、そのため腰部に痛みが発生し運動も制限される。
症状
外傷、打撲、ギックリ腰の既往歴のある患者によく見られる。腰部の両側や片側に損傷がおこった時に体位変換ができなくなる。しかし、損傷してから数時間後に、痛みにが出現する場合もある。罹病時に体位変換ができなくなる。持続的な痛みで、咳嗽、くしゃみなど腹部に力を加えると痛みは加重される。徒手検査時に腰部の脊柱起立筋(特に外縁部)の緊張や膨隆、圧痛点などが見られる。腸骨棱上方の腱起始部や棘突起の両側に圧痛点が認めれる。大腿神経や坐骨神経伸展テスト(SLR ラセーグ微候など)の陰性で、運動時に局所筋部に痛みの発現や増強がみられる。挫傷があれば局部に腫脹の出現も見られる。骨折の原因によるものを排除するために、X線検査を行う。
TENS療法の実際
腰痛の急性期にTENSを用いると顕著な効果が得られる。一方、腰痛の急性期へのTENS使用は、薬物治療を開始して、適切な時期になってから行うべきと言う報告もある。これは刺激強度、部位、周波数、波形数、波形、時間などによって影響されると考えられる。
期待される効果
背部筋群の血液循環の改善や緊張緩和による痛みの軽減
電極配置
大腿二頭筋腱と半膜様筋腱の付近に圧痛点があればそこを使う。腰背腱膜、長短腓骨筋、最長筋、腸助筋などにあるトリガーポイントの中から数カ所を選択して電極を配置する。電極配置部位は毎回同じ部位ではなく、1回に治療後こと部位を変えて行う。実際のTENS治療の電極配置を図に示す。陰極は腰部の圧痛点や腰痛部位に、陽極は両膝窩部に配置する。また腰部の圧痛点や疼痛部位の2対の電極を配置する。

❶ ❷ | 第2・3腰椎棘突起間両側各々約4cmの腰背腱膜上(腰神経後枝) |
① ② | 左右膝窩横紋の中央(後大腿皮神経) |
刺激周波数・強度
①10Hz以下、または100Hz、運動閾値よりやや弱めねで行う。
②疼痛部位の近位で強い刺激をこなうという考え方もあるが、強い筋収縮を引き起こす刺激では、二次的に痛みを誘発する場合があるので注意する。
刺激時間
10~15分(患者の体質により加減すること)治療は隔日1回、10回を1クールとし、各クールの間に適当な休みをとる。
コメント
急性炎症期を過ぎてから温湿布を併用するとより効果的である。治療期間中にできれば、固めのマットを使用する。痛みが軽減したあと、血液循環の改善、内出血や浸潤液の吸収の向上、筋萎縮の防止などを考え、機能を正常に作動させるために背筋の鍛錬が必要である。