[概念・原因]

片頭痛は周期性の発作性半惻頭痛で血管性頭痛の一種である。その誘因としては、精神的ストレス、睡眠不足、過労、ホルモン分泌バランスの変化、遺伝、周囲の環境因子(強い光、騒音、匂い、など)気圧や気温の変化などの内因性や外因性のものがある。頭蓋骨内外の血管が、それらの誘因のいずれかにより、①血小板からセロトニンの過剰な放出により収縮し、セロトニンがMAO物質いより代謝されて血管の透過性が亢進し、炎症物質が産生され、その炎症物質が血管壁の炎症や浮腫を起こし、頭痛を誘発する説、②三叉神経からCGRPなどの神経伝達物質の過剰分泌によって血管が拡張され、血管透過性が亢進し、血管周囲に炎症反応が引き起こされ頭痛を誘発する説が、頭痛の原因を説明する有力な学説であると考えられる。

[症状]

個展的偏頭痛(classic migraine )の前駆症状(偏頭痛の20~30%を占める)としては、視覚障害(閃輝暗点、頭痛側の対側で出現)が多く見られるが、運動障害(言語障害、手足の痺れや脱力感)も見られる事がある頭痛はこめかみから目にかけての一側性で、ズキンズキンと脈打つような痛みが4~6時間持続する(痛みはおよそ1時間でピークに達する)。発作時には悪心、嘔吐などの自律神経症状を伴う人が多い、この偏頭痛は女性に多い。普通型偏頭痛(common migraine)では閃輝暗点のような前駆症状はないが、精神症状や自律神経症(悪心、嘔吐)が先行する事がある。痛みは数時間以内で徐々に増強し、数日間続き、痛み部位は一惻性であるが、時に両側性のものもある。発作時には悪心、嘔吐、悪寒などもあり、流涙、鼻閉などを伴う、この偏頭痛も女性に多い。このような頭痛はTENS療法を用いると比較的良好な結果が得られる事が報告されている。

[期待される効果]

頭痛、肩背部における抹消血液循環の改善や筋緊張緩和による頭痛の軽減

[治療例]

・電極配置 

両側乳様突起の外側下方の増帽筋(内増に頭板状筋、頭半棘筋、後頭直筋)、耳垂の後面(顎二服筋後腹)、耳尖直上の側頭筋上にあるトリガーポイントや圧痛点から数カ所を選択して通電する。実際のTENSの電極配置の1例を図に示す。*眼球部に近いところの通電刺激は差し控える。

・刺激周波数・強度

  1. 2~5Hz 痛覚閾値よりやや強めで行う。疼痛部位の近位で強い刺激を行うと言う考え方もあるが、強い筋収縮を引き起こす刺激では二次的に頭痛を誘発する場合があるので注意する。
  2. 80~120Hz(パルス幅0.5msc)、痛覚閾値よりやや低めで行う。

・刺激時間

約10~30分(患者の体質により加減すること)週5回で行い、10回を1クールとし、各クール間に適当な休みをとる。

※ 電極配置の見方としては、同じ番号の黒丸(⚫️)と白丸(◯)同士を1対として刺激する( )内は、刺激する領域の神経支配を示す。

乳様突起と項窩間中央の増帽筋・頭板状筋上(脊髄神経後枝、頸神経後ろ枝)
第7頸椎・第1胸椎棘突起間外側約6cmの増帽筋・肩甲拳筋上(肩甲背神経、副神経、頸神経後枝、胸神経後枝)
耳垂後方の陥凹部の顎二腹筋後腹上(顔面神経 大耳介神経)
耳尖直上の側頭筋上(顔面神経、三叉神経、耳介側頭神経、小後頭神経)

コメント:偏頭痛におけるTENS療法は比較的良い効果が得られる。しかし頭痛の原因は様々であるため数回の治療を施しても症状が改善されなかったり、重くなる場合には頭蓋内の病変を考えなければならない、その様な場合には、CTやMRIなどの精密検査が必要である。また高血圧による頭痛のTENSでは強刺激を避ける。